パイの役割と魅力

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日本パイ倶楽部 理事の門上です。

パイという言葉を聞くと、何故かスイーツより料理を思い浮かべてしまうのです。
とくにフランス料理では、パイが多用されます。
その役割は、中身の温かさや香りを閉じ込めるというものがあります。
また器として考えるものもあります。そして料理の一部として一緒に食べるというのがあるのです。

これからの季節は、パイ包み焼きがメニューに登場します。
わたしが最近食べた中でもっとも鮮烈な印象を与えてくれたのは、和歌山にあるレストラン「オテル・ド・ヨシノ」の手島純也シェフが作ってくれた本州鹿のパイ包み焼きでした。

このメニューは、パイの中にある鹿肉の温度・香りを閉じ込めるものでした。
と同時にパイ生地もソースと一緒に味わってもらいたいのです。
まずは視覚的なインパクトが必要です。
サイズもあるのですが、私がもっとも気になるのは焼き色です。
うっすら茶褐色というのは、食欲を刺激することはありません。
やはりガツッと焼き色がついてこその料理です。
この茶褐色の色合いと香ばしさは、メイラード反応といって人間がおいしさを感ずる重要な要素の一つなんです。
その条件を見事に満たしてくれた手島シェフのパイ包み焼きには魅了されます。

 

もちろん提供されるときにはカットされ、濃厚なソースが付きます。
中には鹿肉とフォアグラが同居しています。
ソースは鹿の内臓と血液から作られたものです。
まさにフランス料理が持ち続けてきた伝統を美しく現代に蘇らせた逸品です。

ここで食べる度に、フランス料理の歓びを感じるのです。

「オテル・ド・ヨシノ」
和歌山県和歌山市手平2-1-2 和歌山ビッグ愛 12F
073-422-0001

<プロフィール>
門上 武司
日本パイ倶楽部 理事

1952年 大阪生まれ
フードコラムニスト
料理雑誌『あまから手帖』編集顧問